土地や中古戸建の購入を検討する時は、必ず、その土地に面する「道路」のチェックが必要になります。もちろんその土地の見た目や、人や車両の出入りを考えると道路は重要ですが、それ以上に土地の「資産価値」に関わるような理由もあります。
まず建築基準法には、建築を建てるには最低「2mの接道」が必要、とあります。2m以上道路に面していない土地には、建物を建てられない(建て替えできない)ということです。たまに「本物件は建築基準法で定める道路に接していないので再建築ができません」という物件がありますので、よく確認しましょう。
また接する道路の幅が4m未満の場合、「セットバック」と言って、道路幅4mを確保するために、土地が少し削れてしまうことがあります。さらに土地の面積に対して建物総床面積の上限を定める「容積率」は、この道路幅に左右されます。都市計画上は容積率200%と定められているエリアでも、接する道路の幅が4mのため最大容積は160%が限度、というのは都心部ではよくあることです。
さらに見た目はどう見ても道路なのですが、実は建築基準法の道路ではなく「通路」である、みたいな引っ掛けもあるので、要注意です。
見た目では分からないと言うと、「公道」「私道」の区別も同様です。たまに、接道が私道だと資産価値が下がりますか、とご質問を頂きますが、そんなことはありません。しかしその私道の権利持分を取得することができるかどうかはポイントですし、「通行承諾書」「掘削承諾書」と言われる書類があった方がベター、というのは知っておいた方が良いでしょう。
…とまあ、ここまではどちらかと言うと不動産取引の話。
このように土地が道路にどう面するか、というのは実は建物の形状を大きく左右します。例えばいまでも残る風情豊かな京都の町家は「間口が狭く奥が長い」形状になっています。これは豊臣秀吉の時代の節税方法というのは有名な話です。土地が道路に接する間口の大きさに比例し課税されたので、わざと間口を狭くしたんですね。
しかしこの「間口が狭く奥が長い」土地形状は「坪庭」という、小さくかわいい庭をたくさん設けるユニークな住宅様式を生み出しました。
なにも立派な道路に面しているから良い土地、接道面が大きいから資産価値が高い、というわけではありません。それは万人受けする土地かもしれませんが、結局あなたにピッタリの住宅空間が得られるかどうかは分かりません。そこは工夫次第です。例えば建築家やクリエイターに依頼して自分たちだけの住宅を新しく作る場合は、そのイメージに合った土地を探すのが良いと思います。彼らはそういう工夫の達人ですから。