ホームインスペクション(住宅診断) いつやるか?

ホームインスペクション(住宅診断) いつやるか?
業界の裏話を匿名で語ります
2013-10-17 14:15:13

今年6月、国土交通省がまとめた既存住宅インスペクションガイドライン。これは中古住宅売買における住宅診断の位置づけや検査人の資格、技術水準を策定したものだ。今後、一般の中古住宅売買取引にホームインスペクション(住宅診断)が利用されるのが一般化するものと思われる。

 

ところで、一般的な中古住宅の取引は、「物件見学」⇒「購入申込書の提出」⇒「売買契約の締結」⇒「金銭消費貸借契約の締結」⇒「決済・引渡」⇒「入居」といった流れとなるが、この流れの中のどのタイミングでホームインスペクションを実施するのかが問題となる。

 

最も理想的なタイミングは、「購入申込書の提出」から「売買契約の締結」までの間にホームインスペクションを実施することだ。このタイミングで実施すれば、仮に対象建物に欠陥や不具合が見つかっても売買契約が締結される前であるため、その欠陥や不具合を売主が処置した後に契約する、修繕費用を当初の売買価格から控除して契約を締結する、あるいは修繕することができないほどの欠陥や修繕するには甚大な費用がかかるような欠陥等の場合、契約を締結しない等の対処が可能となり、トラブルになりにくい。

ただし、問題なのは、一般に「購入申込書の提出」から「売買契約の締結」までの期間が数日~1週間程度と短いことである。ホームインスペクションは木造一戸建で4時間~5時間程度、マンション一部屋で2時間~3時間程度の時間を要するが、売主、買主、ホームインスペクション事業者、立会をする仲介業者という複数当事者の予定を合わせるなどの調整が必要となることが多い。よって、少なくとも購入申込書の提出する時までに仲介業者に対しその意向を伝えることをお勧めしたい。

 

次に、「売買契約の締結」から「決済・引渡」までの間にホームインスペクションを行う場合である。

ホームインスペクションの結果、仮に柱や梁の腐食や蟻害、給水管や排水管からの漏水等が発見された場合、買主は売主に対し何がしかの請求をすることができると考えれられる。しかし、売買契約上、買主は決済・引渡期日までに残代金を支払わなければならない立場にあり、欠陥や不具合がホームインスペクションで見つかったからといって、勝手に契約を破棄できるわけではない。ともあれ、買主が売主に残代金を支払っていない状態なので、最悪の事態は免れる。

実際、このような事態が発生した際、筆者は売買価格の変更契約を締結させた経験があるが、売買価格の変更契約など、新たな取り決めを売買契約締結後に行うことは、売主と買主で論争がおこる可能性は否定できない。

 

最後に、「決済・引渡」以降にホームインスペクションを行う場合はどうであろうか。一般の売買契約条項では、売主と買主が知り得なかった契約時に存在した物件の不具合や欠陥を、引渡を受けてから3ヶ月以内に買主が発見した場合、その責任を売主に問うことができる(所謂、瑕疵担保責任)。したがって、少なくとも、決済・引渡後、速やかにホームインスペクションを実施すべきであろう。

とはいえこの時点では、売買代金全額は売主の手に渡っている。仮に、売主が債務返済のために売却していたとすれば、売主の手元には一銭もお金がない可能性があり、このような状態で売主に責任を追及しても、解決の糸口が見つからない可能性がある。

 

このように、ホームインスペクションを実施するのであれば、できれば契約締結前までに実施することをお勧めしたい。

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